30年前の亡霊

2009年8月30日(日)

私は学生時代にオーボエを始めて以来、室内楽を多数演奏してきた。特にフランス物、その中でもジャン・フランセの作品は非常に好きだった。バロックオーボエの音楽活動がメインの今も、フランセは好きな作曲家だ。

昔話になるが、学生時代の最後に、やはりフランス音楽が好きな大学オケ木管の連中と室内楽演奏会を開いた。もう30数年前の話だ。フランスの木管室内楽の作曲家作品を並べた、意欲的コンサート、ではなく、無謀なコンサート。いまそのプログラムを見ると、その無謀さに驚く。このプログラムだ。私はこれらの曲のうち、一番難しい、フランセの四重奏曲と、イベールの五重奏曲「3つの小品」を演奏した。まだオーボエを始めて数年でこれら難曲とは、コンサート企画だけでなく私自身も無謀の一言だ。

なぜこのような昔話がこの記事のテーマかというと、その演奏会の録音を、その演奏会発起人の一人である後輩がブログで公開してしまったからなのだ。それも、演奏はYouTubeで全世界に公開。フランセ/木管四重奏曲イベール/五重奏曲「3つの小品」だ。

これらの録音は私もカセットテープで持ってはいたがもう数十年聞いていない。で、久しぶりに自分の演奏を聞いて、かなり驚いた。自分たちの演奏にこのように言うのはおこがましいが、特にフランセは30年前当時のアマチュアレベルよりはかなり上の演奏かもしれない。アンサンブル力・技術力はかなりあり、勉強はそこそこにいかに練習したか、が良くわかる。そして自分自身の演奏についても、30年前の私は今よりも指は回り、リズムは正確、音色は素直なのだ。この30年、ちょっとはうまくなった部分もあるが、根本はあまり変わっていないのだ。

いま思い返すと、この30数年前の演奏会の日をもって、私の人生とオーボエは「冬の時代」に突入した、という気がする。前者はさておいて、私のオーボエが「冬の時代」とは次の意味だ。

この録音のとおり、昔の私の音色は非常に素直な音だった。それもそのはず、その当時の師匠は井口博之師だったからだ。井口師はバロックオーボエ大御所のJ.シェフトラインの弟子。なので、井口師の奏法は、ギトギトしたドイツ奏法の正反対の、浅いアンブシュアの清楚な音色。その奏法は、シェフトライン直伝のバロックオーボエ奏法的部分もあったに違いない。私もその教えを守り、清楚とは言わないまでも録音のとおりの素直な音色だった。ところがこの後に市民オケに入団したところ、この音では全然通用しなかったのだ。特に音量が。周りの木管が野太い、時としては荒い音のため、こちらもそのように吹かないと対抗できないのだ。また当時のアマチュアオケでは、ドイツ的な音を出さないとオーボエ吹きとして評価が低かったこともある。そのためアンブシュアのポイントはどんどん深くなり、結果として表現力はゼロ、音は硬い、dimでぶら下がる、アタックは汚い、音程は悪い、となってしまったのだ。(もちろん悪いのは井口流奏法ではなく、教わった奏法を守らず我流に走った私であることは言うまでもない。)このどうしようもない下手な時代、私にとってのオーボエ冬の時代はバロックオーボエを始めるまで続いた。現在のバロックオーボエの師匠、三宮師に私の数多い欠点を矯正していただき、やっと「冬の時代」から脱出できたように思う。(まだまだ駄目な部分はたくさん残っているが。)

と、そのようにいろいろなことを考えさせられた30年前の亡霊だった。

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