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ミンコフスキ/ルーヴル宮音楽隊演奏会

2009年11月6日(金)

11月3日は三宮門下生発表会に参加し演奏した。場所は、東京オペラシティー内の近江楽堂。響きの豊かなすばらしいホールだ。東京オペラシティーに行くのは大変久しぶりで、最近はコンサートにも全く行っていない。と東京オペラシティー内を歩いていると、「ミンコフスキ」のコンサートポスターが目に入った。ミンコフスキと言えばラモー、そのラモーを演奏するコンサートがその2日後の11月5日にある。最近聴いているCDや映像のほとんどがラモーの私はすぐチケットを購入した。

で昨日、11月5日がその演奏会だった。マルク・ミンコフスキ指揮、ルーヴル宮音楽隊のコンサートだ。この組み合わせの映像は、CS放送のクラシカ・ジャパンで録画した、ラモーのガラ・コンサートでよく見ている。

コンサートの開演時間少し前に、ミンコフスキが通訳を連れてステージに現れ、曲順の変更を告げた。こんなことは普通は場内アナウンスで流されるだけなので、少々驚いた。

さて前半の曲は、ラモーのオペラ中の管弦楽曲をミンコフスキが編曲した、「もう一つのサンフォニー・イマジネール」。時間になり団員が入場したが、クラリネットも2人入っている。えっ、なんでラモーにクラリネット?そしてオーボエは、と見ると、バロックオーボエではなくクラシカルオーボエだ。チューニングのAは、確かにバロックピッチではない。

なんと、ラモーをクラシカル楽器で演奏するのだ。こんな演奏は聞いたことがない。期待が高まる。そして音楽が始まった。音が、音楽が、やけにすっきりしていることにすぐ気が付いた。この理由は明らかで、木管楽器がバロック楽器ではなくクラシカル楽器と、バロックより進歩した楽器だからだ。ただ、弦楽器はバロック弓を使用していた。(ラモーなので当然か。)

ミンコフスキの音楽は、ミンコフスキ自身が音楽を非常に楽しみながら演奏していることがよくわかり、実に楽しい演奏だった。また音楽も音量も変化に富み、多彩な音楽だった。クラリネットも一部の曲に入っていたが、クラリネットが好きでない私にも違和感は全然無かった。(そのクラリネットに楽器の事故があったのは残念だったが。)またミンコフスキはサービス精神が旺盛で、ときおり客席を向いて短く、かつ日本語の単語を交えて曲の紹介を行った。またオケの技術は極めて高く、かなり速いテンポをものともせず演奏していた。

私の好きなラモーの音楽を、クラシカル楽器で聴くという大変稀なチャンスに遭遇し、かつ演奏もすばらしく満足した。

後半は、モーツァルトのボストホルンセレナーデ。この曲は弦楽器は(当然)クラシカル弓で演奏していた。さてこの曲は私は2回演奏したことがあるが、木管楽器にとってはコンツェルタンテといえる箇所もあり、演奏して実に楽しい曲だ。音楽を楽しみながら指揮するミンコフスキなので、愉悦に富んだ演奏だった。そして、仰天する演出があった。

この曲の名前のとおり、ポストホルンで演奏する箇所がある。ポストホルンという名称だが通常はラッパ奏者が演奏する。この演奏する箇所の直前、ラッパ奏者がステージからいったん退出した。てっきり、舞台裏かバルコニーでポストホルンを演奏するのか、と思ったが、その予想は全くはずれた。郵便配達夫の格好をしたラッパ奏者が、郵便配達用の赤い自転車にまたがりポストホルンを吹きながらステージに登場したのだ。自転車をこぎながらなのにポストホルンの音はまったく揺れず、見事な演奏。そしてもっと見事なのは、自転車の乗り方。普通片手運転で極めてゆっくり自転車をこげば、かなりふらつくのは当然だ。ところが当のラッパ氏、ステージの狭い空間を自転車でゆっくりまっすぐにふらつかずに乗る。この自転車の乗り方は、かなり自転車に慣れた人だろう。そして、ヴァイオリンの女性に手紙を渡し、ステージ端まで行って戻ってくると、指揮台付近でベルをチリンチリン鳴らし、小包をミンコフスキに渡す、という演出まであった。最後に音をちょっとはずしはしたが、そのような演出にもかからわず見事にポストホルンを吹ききった。

ここは曲の途中だが、拍手で応えたいところだ。しかし大人しい聴衆から拍手のなかったことは大変残念だった。先のラモーもそうだが、ミンコフスキはそのような聴衆の反応、コミュニケーションを待っていたように思うからだ。

さてここで、オーボエについて述べる。この演奏会で1stオーボエを吹いたEmmanuel Laporte氏の名前は私は知らないが、極めて上手い人だ。演奏した楽器は、なんと2キーのクラシカルオーボエなのだ。2キーのクラシカルオーボエは私の知る中で、最も難しいオーボエ属楽器だ。バロックオーボエの10倍難しい楽器、と思う。一番難しいのは、上の音を出すポイントが非常に狭いためちょっと油断するとオクターブ下に落ちてしまう、ということ。バロック時代より音の華麗さが求められた古典時代、オーボエの内径は細くなって行き設計は変わって行った。その過渡期の楽器が、この2キークラシカルオーボエだ。この難しさのため、1800年以降はオーボエにどんどんキーが付加され、現在のモダンオーボエに至るのだ。さてその最も難しい楽器をもってして、件のLaporte氏はほとんどはずさなかった。私が認識したのは、ハイDで2回、ハイAで1回失敗しただけ。この難しい曲でそれしかはずさないのは神業としか言いようが無い。音色は、普通のクラシカルオーボエとはかなり異なる、モダンオーボエに近い音色だ。そして音量は小さいのによく聞こえるという、たとえればモダンオーボエのシェレンベルガーのような奏法だ。

このLaporte氏の奏法を、私なりに分析すると、次のようになる。2キークラシカルオーボエで上の音が落ちないようにするにはかなりの息のスピードが必要。弱音でも息のスピードを保つために、かなり小さなリードでかつリードの下側の振動を止めるようにして吹いているのではないだろうか。要するに、リードをあまり鳴らないようにして速い息を送ることで落ちることを防ぎ、また良い音色を保っているのではないだろうか。まあ、下手な私が超一流のクラシカルオーボエ奏者を分析しても分析しきれるものではないが。

ということでこの演奏会、楽しく、高い技術に驚嘆し、実に満足した。このような楽しい気持ちで帰途に着いたのは本当に久しぶりの体験だった。

 
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職業はソフトウェアエンジニア。趣味はバロックオーボエとモダンオーボエ演奏。このブログでは、Python・Go・Scala言語、そのWEBアプリケーションフレームワーク、そしてバロックオーボエ・クラシカルオーボエの話題を中心に書いて参ります。

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